難治性の酒さを長く診療していると、顔だけを見ていてもなかなか答えが出ない方に出会います。外用治療を真面目に続けているのに赤みと炎症が繰り返されるとき、私は診察室で慎重に腸のお話を切り出します。ここ数年の間に発表された研究が、酒さをはじめとする炎症性皮膚疾患を見る視点を少しずつ変えてきているからです。


酒さは本当に顔だけの問題なのか
複数の研究を総合すると、酒さのない人に比べて、酒さのある人では自己免疫疾患やアレルギー性疾患が相対的により多く併存する傾向が報告されています。もちろん個人差があり、すべての患者さんに当てはまる話ではありません。ただ、こうしたデータが積み重なるにつれ、酒さを単に顔に限られた疾患と見るよりも、全身的な文脈で理解しようという主張が次第に説得力を増しています。

ここで最近とみに注目されている概念がマイクロバイオームです。私たちの体に住む微生物群集が健康状態を左右するという研究が、さまざまな分野で続いています。

腸の健康と肌はどのようにつながっているのか
皮膚科でもマイクロバイオーム研究が盛んです。腸の健康や腸内細菌の状態がさまざまな皮膚疾患の発生に意味のある影響を与えると考えられ、腸内細菌のバランスが崩れる(ディスバイオシス、Dysbiosis)と肌に好ましくない影響を及ぼす可能性が高いと考える研究者が増えています。
「お腹の調子が悪いと肌も荒れる」という昔からの言葉は、もしかすると根拠のない話ではなかったのかもしれません。
とはいえ、これまで強調してきた要素を忘れてはいけません。悪化因子と精神的ストレスは、依然として酒さに影響を与える基本的な軸です。下の図に、これまで6回にわたって取り上げてきた内容を一つにまとめておきました。

症状や原因、生活習慣についてまだ整理できていない方は、酒さの症状を取り上げた第1部と原因を解説した第2部を先に読んでおくと、今日の記事の文脈がぐっとつかみやすくなります。

SIBOとリーキーガット、何が起きているのか
腸の問題の中でも特に注目しているのが、小腸内細菌異常増殖症、すなわちSIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth)です。

SIBOが起こると腸の細胞壁で炎症反応が生じ、その過程で腸のバリア細胞をしっかりとつなぎとめていたタイトジャンクション(tight junction)が緩みます。このように腸のバリアが緩んだ状態をリーキーガット症候群(Leaky gut syndrome)と呼び、開いた隙間からさまざまな毒素や有害物質が体内に漏れ出し、全身的な炎症反応を引き起こすことになります。

その影響は腸だけにとどまりません。関節、神経系、そして肌に至るまで、全身にわたってさまざまな症状が現れることがあります。さらに、全身の炎症を引き起こすことが知られている糖化最終産物(AGEs、Advanced Glycation End-products)や、腸内の善玉菌がエサとして利用する炭水化物であるMAC(Microbiota-Accessible Carbohydrates)を扱った論文も継続的に発表されています。
原因の骨組みが見えてくれば、方向性も見えてきます。SIBOとリーキーガット、そしてAGEsを増やす要因を正していくことで、症状の改善を期待できるということです。繰り返す赤みにお疲れの方は、今すぐチャットで相談するから、今の状態に合った方向性を一緒に整理することができます。
胃酸を守る生活習慣から
意外にも出発点は胃酸です。胃酸が下がりすぎると小腸の環境が乱れやすくなりますが、次のような習慣が胃酸の低下を防ぐのに役立ちます。
- 食べ物をできるだけ長くかむ
- 食事の前後30分はできるだけ水を飲まない
- ご飯を水やスープに浸して食べない
- 紅酢のような酢を薄めたものを一緒にとる

なお、胃酸の分泌を抑える薬を長期間服用した場合、酒さの発症率が高まるという報告があります。服用中の薬がある場合は、自己判断でやめるのではなく、主治医と相談されることをお勧めします。
何を食べ、何を減らすか
食事のポイントは、MACが豊富な食品を増やし、AGEsの多い食品を減らすことにあります。精製炭水化物には、腸内の善玉菌が利用できるMACが事実上含まれていないという点は見落とされがちです。
| 増やすとよい方向 | 減らしたほうがよい方向 |
|---|---|
| MACが豊富な全粒穀物・野菜・豆類 | 白米や小麦粉などの精製炭水化物 |
| 腸内の善玉菌のエサとなる食物繊維 | 高温調理でAGEsが多く生じた食品 |
こうした方向性は一朝一夕に成果が出るものではなく、個人の消化の状態や基礎疾患に合わせた調整が必要です。
薬と検査はどこまで考えるか
小腸内細菌異常増殖が疑われる場合、専門医の判断のもとで、リファキシミン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンなどの抗菌薬や、フルコナゾールなどの抗真菌薬、メトロニダゾールなどの抗原虫薬を検討することがあります。あくまで診察を通じた個別の判断が前提であり、反応には個人差があります。
また、胃酸が低下したりヘリコバクター・ピロリ菌が増殖したりすると、リーキーガットにつながる場合があります。そのため必要であればヘリコバクター検査を行い、確認された場合は除菌療法を検討することもあります。

胃酸が低めの方には、ベタインHClが役立つ可能性があるという見解もあります。ただし、健康食品やサプリメントとして手に入るものであっても、服用するかどうかはご自身の胃腸の状態を確認したうえで、相談を経て決めるほうが安全です。

結局、腸も一緒にケアする理由
腸内微生物は、私たちが一般に考えているよりもはるかに大きな役割を担っていることが明らかになりつつあります。消化器からメンタルヘルスに至るまで、幅広い健康問題と関わっているというデータが積み重なっている分、腸内マイクロバイオームを良好に保つことは肌にとっても意味があります。
最後に、いつも強調している二つのことをもう一度確認します。ストレスレベルを管理することと、十分な睡眠をとることです。これらもまた、腸内微生物のバランスに大きな影響を与えるからです。睡眠と赤みの関係が気になる方は睡眠が乱れると酒さも一緒に悪化する理由を、肌のバリアそのものが気になる方は肌のバリアのお話を続けてお読みになることをお勧めします。食べ物との関係については、酒さと食べ物を取り上げた第3部でより詳しくまとめています。
機能性医学的なアプローチは、まだすべての皮膚科医に主流として受け入れられているわけではありません。それでも難治性の酒さとは明らかな関連があると考え、6回シリーズの最後のテーマとしてこのお話を選びました。赤みがなかなか治まらず、方向性を改めて考えたい方は、チャットで相談するを押して気軽にお尋ねください。
酒さに長く悩まされている方にとって、このシリーズが少しでも方向性を見つける助けになっていれば幸いです。
参考文献
- Kim, Hei Sung. "Microbiota in rosacea." American Journal of Clinical Dermatology 21.1 (2020): 25-35.
- Daou, Hala, et al. "Rosacea and the microbiome: a systematic review." Dermatology and Therapy 11 (2021): 1-12.
- Woo, Yu Ri, et al. "Updates on the risk of neuropsychiatric and gastrointestinal comorbidities in rosacea and its possible relationship with the gut-brain-skin axis." International Journal of Molecular Sciences 21.22 (2020): 8427.
- O'Sullivan, Julie N., et al. "Protecting the outside: Biological tools to manipulate the skin microbiota." FEMS Microbiology Ecology 96.6 (2020): fiaa085.
執筆:チョ・ミンギョル院長(皮膚科専門医、大韓皮膚科医師会 色素・ニキビ・酒さ・毛髪マスター認定)。詳しい経歴は医療スタッフ紹介でご確認いただけます。 初回公開 2023年3月27日 / 最終確認 2026-07-09
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、適した治療や結果は個人の状態によって異なる場合があります。