診察室で「フィラーって怖くないですか?」という質問を本当によく受けます。いつからか「フィラー恐怖症」という言葉が広まり、ボリュームが失われた部位を補えば良くなるはずの方まで、最初から施術をあきらめてしまうケースが増えました。今日は、その不安の正体が正確にどこから来るのか、そしてなぜ私が今もフィラーをアンチエイジングの柱の一つとして説明しているのかをお話ししようと思います。

結論から申し上げると、フィラーをめぐる不安の多くは、フィラーという素材そのものよりも、誤った情報や不適切に行われた施術の結果から生じています。ガイドラインを守り、熟練した手を経れば、フィラーは不足したボリュームを安全に補ってくれる有用な施術素材です。
アンチエイジングとは結局、何を扱う作業なのか
年齢とともに顔が違って見えることには、二つの軸があります。一つは肌を引き締めるタイトニング、もう一つはへこんだりたるんだりしたボリュームを再配置するボリューマイジングです。


簡単にいえば、肌をしっかり引き締め、下顔面のたるんだボリュームは減らし、中顔面と上顔面のボリュームは補うと、ぐっと若々しい印象になります。ボリュームを足す作業は、アンチエイジングにおいて欠かしにくい要素です。フィラー恐怖症のためにこの軸をまるごとあきらめるのは、私個人のたとえでいえば、飛車角落ちで将棋を指すようなものだと思います。
肌を引き締めるタイトニングの側は、リフティング機器でアプローチします。機器ごとの特性が気になる方は、さまざまなリフティング機器を一度に比較した記事やサーマクールとウルセラの違いをまとめた記事を先にお読みいただくのもよいでしょう。今日の記事はその反対側、ボリュームを補う軸についてのお話です。
ボリュームを補うもう一つの方法として脂肪注入があります。ただし脂肪は吸収率が高く最終的な結果を予測しにくいうえ、手術の過程が負担になることもあり、追加の施術が必要になる可能性もあります。簡単で比較的早い変化を望む方には適さない場合があります。
ヒアルロン酸フィラーが長く信頼されてきた理由
現在最も広く使われているフィラーは、ヒアルロン酸(HA)フィラーです。安全性と効果が多くの研究で検討されてきており、審査が厳しいことで知られるFDAでも承認を受けている製品です。


実はヒアルロン酸は、皮膚や関節、目など、私たちの体のあちこちに自然に存在する成分です。特に皮膚の真皮層では水分を引き寄せて保持する役割を担い、しっとりと弾力のある肌を保つのに役立っています。
フィラーに使われるヒアルロン酸は体との生体適合性が高く、拒絶反応やアレルギーのリスクは非常にまれであることが知られています。では、いったいどの成分が問題だというのでしょうか。
では、心配すべき成分はないのでしょうか
HAフィラーには、形と持続性を保つために架橋剤であるBDDE(1,4-Butanediol Diglycidyl Ether)がごく微量含まれています。このBDDEもFDAとCEの認証を受けた物質であり、製造過程で残留量が管理されています。
学会資料によると、BDDEによる遅発性過敏反応はおよそ0.02%から0.4%程度と報告されています。1万人中2人から40人の水準で、個人差はありますが、よくあることではありません。何より、HAフィラーは施術後の結果が気に入らない場合や、不自然な場合、遅発性の過敏反応が現れた場合に、ヒアルロニダーゼという酵素でフィラーを溶かして元に戻すことができます。この「戻せる可能性」は、ヒアルロン酸フィラーが持つ大きな安全装置の一つです。
コラーゲンを刺激する製品とは何が違うのか
スカルプトラ(PLLA)やジュベルック(PDLLA)のような製品は、コラーゲンの生成を促して肌の弾力を高める仕組みで働きます。弾力を加え、少しボリュームを足すには優れていますが、へこんだ部位を直接埋めて輪郭を整える力は、HAフィラーに比べて限定的です。二つの系統をまとめると次のとおりです。
| 区分 | ヒアルロン酸フィラー | コラーゲン刺激製品 |
|---|---|---|
| 代表例 | HAフィラー | スカルプトラ、ジュベルック |
| 作用の仕組み | 注入した体積が直接ボリュームを補う | コラーゲン生成を促して弾力を加える |
| ボリュームの補充 | 注入した場所ですぐに形を整えやすい | 直接埋める力は限定的 |
| 元に戻すこと | 酵素で溶かして調整可能 | すぐに元に戻すのは難しい |
こうした理由から、顔のへこんだ部位を補って自然な輪郭を作る目的であれば、私はHAフィラーを優先して検討するほうです。
フィラーが動いたと感じる方もいらっしゃいます。ところが診察室で確認してみると、最初から誤った位置にフィラーが注入されているケースがかなり多いのです。特にほうれい線の部位でこうした話がよく出ますが、たいていは正確な層と位置に適切に注入されなかったことが原因です。


ちなみに、当院がボリューム目的で扱っている製品の中には、ボリュームとともにコラーゲン刺激も兼ねるレディエッセのような選択肢もあります。どの部位を、どのような目的で補うかによって、素材の選択は変わります。
オーバーフィルド症候群はフィラーのせいなのか
フィラーに対する代表的な懸念の一つが、オーバーフィルド症候群、つまり過剰に注入したことで生じる不自然さです。ボリュームが過度に補われると、顔がぎこちなく見えたり、バランスが崩れて見えたりすることがあります。ただし、これはフィラーという素材の問題というより、施術した医師と施術を受けた方の双方に関わる問題です。
- 施術者が、顔の比率と調和を十分に考慮せずに過剰な量を注入した可能性があります。
- 施術を受ける方が、非現実的な期待や行き過ぎた変化を求めた可能性があります。
- 良いカウンセリングであれば、顔の比率や輪郭、肌の状態を一緒に見て、適切な量を自然な形で提案します。
料理が塩辛いからといって塩そのものが悪いわけではないように、フィラーも素材の問題ではなく、適切でない施術方法が問題だということです。多くの方がフィラーを怖がる理由も、結局は不適切な結果を先に目にしたからだと考えています。
診察室で私がフィラーをすすめる瞬間
率直な話を一つ付け加えます。私は以前から額を持ち上げて目を開ける癖があり、そのせいで額に深く刻まれた縦じわがありました。このしわをHAフィラーで修正し、定期的にメンテナンスしていますが、実際に気づく方はほとんどいません。

ほうれい線に悩んでいた私の妻にも、HAフィラーでお手伝いしました。このように正確な位置に適切に施術すれば、HAフィラーはアンチエイジングにおいて十分に有用な道具です。フィラー恐怖症をいったん脇に置いて、どの軸を補い、どの軸を引き締めるかを一緒に設計してみることをおすすめします。ボリュームとタイトニングをどう組み合わせるか気になる方は、オンダリフティングを単独ですすめる場合と併用する場合の基準も参考になるはずです。
チャットで相談する執筆:チョ・ミンギョル院長(皮膚科専門医、大韓皮膚科医師会 色素・ニキビ・酒さ・毛髪マスター認定)。詳しい経歴は医療スタッフ紹介でご確認いただけます。 初回公開 2024年12月24日 / 最終確認 2026-07-09
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、適した治療や結果は個人の状態によって異なる場合があります。