夏になると、診察室でぐっと増える質問があります。「夏は色素治療をしないほうがいいと聞いたのですが、今受けても大丈夫でしょうか?」結論から申し上げると、色素治療全体を夏という季節ひとつでまとめて延期する必要はありません。ただし、どの波長の、どの方式のレーザーかによって、夏の安全性ははっきり分かれます。そのため私は、時期よりもまず波長と方式を確認します。
夏は色素をそのままにしておいてもよいのか
強い紫外線が気になるからといって、すでに出てきた色素を放置すると、かえって色がより濃くなる方向に進みやすくなります。このとき、夏でも比較的負担が少ないと考えられているのが、低出力のQスイッチNd:YAGレーザー、いわゆるトーニング治療です。
一つ押さえておきたいのは、同じ名前を使っていても、すべてが同じ治療ではないということです。「おまかせ」といっても、どの店でもまったく同じメニューが出てくるわけではないように、トーニングも機器やパラメーター、診断によって中身が変わります。トーニングを選ぶときに何を確認すればよいかは、レーザートーニングを受ける前に知っておきたいことでより詳しくまとめています。

1064nmトーニングが夏でも検討される理由
QスイッチNd:YAGレーザーが使う1064nmの波長は、表皮への吸収が比較的低い波長です。表皮に大きなダメージを残さない方式なので、紫外線の強い夏でも比較的負担少なく施術を続けることができます。
夏に木の枝を剪定しておくと、葉が生い茂って広がれなくなることにたとえられます。

この治療の代表的な役割は、表皮に存在するメラノサイトの樹状突起を切り、色素が周囲に広がって沈着が深まる流れを防ぐことにあります。

電子顕微鏡で観察すると、上の写真のように、メラノサイトの構造やメラノソームの超微細構造にまで影響を与え、メラニンの移動を抑えて表皮のメラノソームを減少させる様子が確認されます。その結果、全体的なトーンアップと色素沈着の可能性を、あわせて低くする方向に働きます。表皮の色素を消すだけでは足りず、真皮の背景まで一緒に見る必要がある理由は、表皮のメラニンだけを消しても色素が再び出てくる背景で続けて説明しています。
夏に屋外での活動が多い方は、低出力トーニングを定期的に続けるほうが色のケアに役立ちます。
アブレーティブレーザーは、なぜ季節をより気にするのか
反対に、夏という季節をより慎重に考えるべきものもあります。CO2レーザーとEr:YAGレーザーは、皮膚を削ったり焼いたりするアブレーティブ(剥皮性)レーザーです。扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)や脂漏性角化症(老人性イボ)のような病変を扱うときに使われますが、施術後に紫外線を浴びる機会が増えると、炎症後色素沈着、つまりPIHの可能性が高まります。

もう一つ、現実的な問題もあります。こうした施術のあとにはデュオアクティブ(DuoDERM)のようなハイドロコロイド・ドレッシングが欠かせませんが、汗と熱の多い夏は、ドレッシングを安定して保つのが簡単ではありません。IPLやエクセルVのようなロングパルス532nm系のレーザーは皮膚を削る方式ではありませんが、表皮に細かなかさぶたができることがあるため、紫外線を浴びることが多い時期はPIHのリスクもあわせて高まる可能性があります。
病変によって治療方式と季節の考慮点がどう変わるかを整理すると、次のとおりです。
| 方式 | 代表的な状況 | 夏の考慮点 |
|---|---|---|
| 低出力トーニング 1064nm | 全体的な色素ケア | 表皮へのダメージが少なく負担は比較的低い |
| アブレーティブ CO2 Er:YAG | 扁平疣贅 脂漏性角化症 稗粒腫 | 紫外線曝露でPIHの可能性が上昇 |
| ロングパルス 532nm | 表在性の色素病変 | 細かなかさぶたによりPIHのリスクもあわせて増加 |
そのため、夏に屋外活動が多い方であれば、CO2やEr:YAGで扁平疣贅・脂漏性角化症・稗粒腫を除去する施術や、CO2フラクショナルを用いた傷跡治療は、少し秋に延ばして計画するのも悪くない選択です。夏にアブレーティブレーザーを計画するなら、回復ケアまであわせて考えるリポットレーザーのような機器の特性をあらかじめ理解しておくと役立ちます。
脂漏性角化症なのか日光黒子(老人性色素斑)なのか、あるいは別の色素疾患なのか、迷うケースも多くあります。病変を見分ける基準は脂漏性角化症と間違えやすい色素疾患で別に整理していますので、参考にしていただければと思います。
- 低出力トーニングは表皮への負担が少なく、夏でも検討されることが多いです
- アブレーティブレーザーは、施術後の紫外線曝露とドレッシングの維持がポイントです
- 病変の種類によって、時期を調整するかどうかが変わります
夏の色素治療の時期について迷っているなら、ご自身の病変と生活パターンに合った方向性をまず決めるのがよいでしょう。今すぐチャットで相談する
季節が結果を決めるという通説を見直す
時期を一律に延ばすのが正解だと断定するのは困難です。次の資料を一緒に見てみましょう。

532nmの波長のQスイッチレーザーで治療を受けた患者のうち約20.3%でPIHが観察されたものの、季節による影響は確認されなかったという報告があります。
この資料は、夏という季節そのものがPIHを決定づける唯一の変数ではないことを示唆しています。言い換えれば、夏でも適切なケアを並行すれば、色素沈着を十分に予防する方向に導けるということです。PIHが実際に起きたとき、初期のケアで経過がどう分かれるかは、診察室でよく出会う炎症後色素沈着に詳しく書いています。
夏の色素治療は、このようにケアします
施術後に日焼け止めをきちんと塗り、基本的なケアを丁寧に行えば、夏でも方式に合わせてレーザー施術を続けることができます。たとえPIHが生じても、適切なケアと追加治療によって改善するケースが多いので、過度に心配する必要はないと考えています。ただし、個人の肌タイプや病変、生活パターンによって、適切な治療と経過は異なる場合があります。

まとめると、夏だからという理由だけで色素を放置するよりも、波長と方式を基準に、今できるケアと後に延ばす施術を分けるほうが合理的です。低出力トーニングはスターウォーカーのようなQスイッチ系の機器で続け、アブレーティブな治療は回復ケアがしやすい時期に調整する、といった具合です。病変の見分けがあいまいな場合は、脂漏性角化症か日光黒子か迷ったときに確認することをまず読んでみるのもよいでしょう。

ご自身の色素が今ケアしてもよい種類なのか、秋に延ばしたほうがよい病変なのか気になる方は、お気軽にお尋ねください。チャットで相談する
執筆:チョ・ミンギョル院長(皮膚科専門医、大韓皮膚科医師会 色素・ニキビ・酒さ・毛髪マスター認定)。詳しい経歴は医療スタッフ紹介でご確認いただけます。 初回公開 2024年6月10日 / 最終確認 2026-07-09
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個人の状態によって適切な治療と結果は異なる場合があります。